ここに書かれている導入事例は、
なるべく多くの皆さんに分かりやすくという思いで取り上げられた一例です。

企業やビジネスは数えきれないほどのタイプがあります。
しかし、企業の進化の基本は同じ部分がたくさんあります。

必ず何かのヒントが見つかるはずです。
少し長めの文章ですが、読者の方の取り組みに合わせて読んでいただけると幸いです。


牛乳スタイル進化物語
NEW乳
クライアント/静岡牛乳協同組合

売り上げが低迷している、
他社との差別化がつけにくい、
消費者からもバイヤーからも あまり期待されなくなってきた「牛乳」の世界。
消費者の視点で商品力をつけ、 差別化するためのブランド戦略、
ライフスタイル化したパッケージ構築、
シリーズ展開による売り場拡張作戦を実行し
牛乳離れが進んでいる若い世代の新規顧客を獲得。
それは、意識改革がやりがいと生きがいを
創造した結果だった。


「できるだけの手は尽くしてきた」という思い込み

「牛乳の売り上げの落ち込みに歯止めをかけるために、何か手を打たなければ。しかし、これまでも新製品を作ったり、パッケージを変えてみたり、流通を工夫したり、できるだけの手段は講じてきた。それでも効果がない。もっと何か違うことをやらなければ」…と考えていたクライアント。2007年当時、おりしも世の中は海洋深層水ブーム。「駿河湾から良質な海洋深層水がとれる静岡で、ミネラル豊富なこの水を使い、新しい牛乳を開発したらどうだろう。でも中味を変えるだけではこれまでと同じだ…」。そう思っていた時に、私たちとご縁をいただきました。

「手は尽くしてきた」と思っているクライアント。
しかし、これまでの経緯を聞いて、まだ改善の余地はあると感じた私たちは、まずブランドとは何かというお話をさせていただきました。

「新商品名を考えたり、マークをつけることだけがブランドではありません。
その価値が上がるような工夫をいろいろ行って(ブランディング)、それを消費者が受け入れてくれた時に初めてブランド力が付きます。マークや名前は、それだけではただの商標でしかないのです」。そういう意味で、このクライアントには、長年、乳製品を製造・販売し続けてきたという実績と信頼はありますが、「この商品なら、ココ!」と他社と明らかに差別化できるようなブランド力にまでは至っていませんでした。「HIの導入とは、意識の改革をしながらブランディングに取り組むことで、企業を進化させることを目的としています。決してこれまでのことを否定するのではありませんが、伝統として守ってきたことを壊さなければならない場合もあります」。

こういう話をさせていただくと、「何だか面倒くさそうだ」「言ってることは分かるけど、うちはそれどころじゃない」「もっと手っ取り早く利益を出したい」と思われる方もいます。しかし、このクライアントは、「これまでとは何か違う」と受け取ってくださり、一緒にプロジェクトを発進することになりました。それは、私たちにとっても大きな励みでした。

HIポイント
●手は尽くした、でもダメだったと思うのは思い込み。自分を疑ってみる。
●名前やマークだけではブランドではない。価値を上げる行為=ブランディングが必要。
●進化させるには、それ相応の予算・労力・時間・覚悟が必要。


可能性を探るための調査を実施

クライアントが現在、どのような状況に置かれているのか、今後どんな可能性があるのかを客観的にマクロの視点で捉えるための企業・業界・競合・消費者エッセンスサーチを行いました。

企業エッセンスサーチとは、この企業はどのようなことをやってきて、どんな歴史があり、どこに強み・弱みがあるかを把握する調査です。まず企業の取材をしますが、人は立場によって捉え方も考え方も違うもの。そこで、経営者、技術者、営業スタッフなどさまざまな立場の人たちから話を聞き、さらに取材以外にこちらで調べた世の中の状況なども付加しながら、独自のノウハウで分析します。

業界エッセンスサーチとは、企業の人たちは業界の現状を正しく認識しているかを確認する調査です。こちらの独自のノウハウで業界を探り、クライアントと認識のズレがあれば、そのすり合わせをします。

競合エッセンスサーチとは、競合他社はどんな展開をしているか?大手は?同レベルの企業は?などを、比較検討する調査です。クライアントの話を聞きつつ、実際にパッケージを比較したり、売り場、PR方法、バイヤーへの売り込み方などを検証します。

消費者エッセンスサーチとは、消費者に指示されている牛乳、されていない牛乳はどれか?その違いは?消費者は牛乳をどう捉えているか、などを把握します。クライアントも、漠然と「消費者はこう思っているのではないか」と感じてはいても、裏付け調査をしていない場合があります。それを、こちらのノウハウで調べた世の中の動向と照らし合わせて確認します。

さらに、実際の消費者の意識調査をするために、100人アンケートを実施しました。
「なぜ牛乳は売れなくなってきているのか?」を探るためもありますが、牛乳に関わってきた人たちの意識を改革するためのものでもあります。消費者の生の声を聞くことで、漠然と捉えていた牛乳を取り巻く現状が明確になり、そこから自分たちの意識のズレや改善点・今後の可能性が見えてくるのです。実際、これらの調査をすることで、さまざまなことが分かってきました。

HIポイント
●企業・業界・競合・消費者の現状を客観的な視点で再認識する。
●消費者が商品をどう見ているかを再認識する。
●消費者の意識と、自分たちの意識のすり合わせをする。


イチオシではないと思っていた商品に、実はすばらしい可能性があった

消費者の意識調査から分かったのが、「牛乳は太る」というイメージでした。
特に若い女性やメタボを気にする男性にその傾向が見られます。他に様々な飲み物があるから牛乳を飲む理由がないと、生活の中で存在感が薄くなっていたのです。牛乳を飲んでいるのは、栄養やカルシウムを摂るように親から与えられている子供と、かつて牛乳が全盛期を誇った時代に慣れ親しんできた年配の世代でした。

敬遠されつつある牛乳ですが、その中でも低脂肪乳はまだ人気がありました。
脂肪分が少ないから太らない、濃い牛乳より価格が安いというイメージがあるからです。
低脂肪乳が売れているという事実は、当然、業界の人たちも認識していました。ただ、一時期、濃い牛乳ブームというものがあり、「濃い牛乳はコクがあっておいしい」という評価を得ていたため、低脂肪乳はコクが減り味が薄くなるから、濃い牛乳に比べるとあまりおいしいとは言えない。イチオシ商品ではないが、売れるから作る、という捉え方をしていたのです。「濃い牛乳は太ると思われているのではないか」と薄々思ってはいても確証はなく、それより「低脂肪乳は安いから売れているのだろう」という思いの方が強かったようです。

しかし、時代によって消費者の嗜好は変わりますし、「おいしい」「おいしくない」もどこに基準を置くのか、難しいものがあります。
その人の置かれた環境、食べる時の状況、その日の体調によって変わる不安定なものだからです。
食品メーカーさんは自分たちの誇りとして、「おいしさ」が商品価値の80〜90%を占めると考えがちですが、実は消費者は、商品が醸し出すイメージや雰囲気を優先して買っていたりします。消費者は味についてはシロウトなので、明らかにまずいものでなければ、味の良し悪しの本当のところは分かりません。実はおいしさとは、本質の味以上に、おいしいと思わせる演出をすることで感じてもらう要因の方が大きいのです。それもブランド力と言えます。

しかも、低脂肪乳の味については、カロリーを気にする人やさっぱりした飲み口が好きな人にとっては何の問題もありません。要は、他の低脂肪乳よりおいしいと思ってもらえればいいのです。
「万人がおいしいと思うものを目指すのではなく、“低脂肪乳が必要な、あなたのために作りましたよ”という気持ちで作ればいいんです」という話をし、ライフスタイル提案の意味をご理解いただきました。そして、「味を良くする努力をしながら、新しい牛乳のスタイルに気づいてもらえるよう、味以外のファクターに力を入れて新商品の構築に取り組もう」という意思統一ができました。

そして、駿河湾の海洋深層水を使った低脂肪乳を試作してみると…、絶妙においしい低脂肪乳に仕上がりました。そこには、調合の具合や熱処理の仕方という職人技を持つベテラン技術者の存在がありました。そして誰もが「このレベルなら、いける!」と納得する製品を武器に、プロジェクトに挑むことができるようになったのです。

HIポイント
●おいしさは口で味わう要因より、イメージで感じる要因の方が大きかったりする。
●これからの商品は、ライフスタイル提案ができているかが重要。
●意識改革したところに「ビジネスの種」(差別化)は発見できる。
●負を正に変えるところに、ニーズやウォンツがある。


中小企業だからこそ、大手がやらないことに挑戦する意義

牛乳の世界は、生乳100%は「牛乳」、低脂肪乳のように水を加えたものは「加工乳」、コーヒーなど他の素材が入っているものは「乳飲料」と区分されています。しかし、そんな区分があることを知る消費者は少なく、売り場でも、店によって好きなように並べられています。

クライアントには、「海洋深層水を使って通常の濃い牛乳と低脂肪乳の2種類を出したい。さらに、乳飲料などもっと他の展開もできれば…」という考えがあり、それなら今後、いろいろな商品を開発した時、バラバラに見えるのではなく、ひとつのコンセプトで創り上げたことが分かるようなシリーズ展開した方がいいということになりました。そうすることで、バイヤーや消費者に、「新しいことにチャレンジしている会社だ」という印象を与え、話題性も生まれます。また、牛乳は利益率が低いため、広告やPRの予算を出すのは厳しいものがありますが、シリーズ展開することで、グループパワーが出て顧客へ存在をPRしやすくなります。

メーカーとしては、単品の方が集中して製造できるし、管理もしやすいのです。
中小企業ならなおさらで、「だからうちは、シリーズ展開などできない」とおっしゃる所もあります。しかし、単品で市場シェアを占めている大手に対抗するには、中小企業こそがシリーズ展開によるブランディングに取り組む必要があるとも言えます。ただ、そこに目指すものがないと、大変なだけになってしまいますが、今回は、販売エリアを細分化し、その中で「地域No.1を目指しましょう」ということを目標に掲げました。

シリーズ展開することが差別化になると意思統一でき、事業の方向性が決まりました。そして話し合いを重ね、ブランド名を「NEW乳」、事業コンセプトを「いつも牛乳に新しさを」に決定。
これを決めたことで、プロジェクトを進める際、開発の軸がぶれない(情報の発信)&パッケージや商品名をシリーズ展開することで消費者・バイヤーなどのお客様に記憶してもらいやすい(情報の受信)が可能となったのです。

シリーズ展開として、まず「おいしい低脂肪NEW乳」と「おいしい濃厚NEW乳」という定番2種類の「受皿商品」に加え、甘さ控え目の「おいしい珈琲NEW乳」を出してNEW乳を定着させ、その後、新茶の季節は「おいしい緑茶NEW乳」など、季節ごとに変り種を出して行こうということになりました。この変り種商品というのは、たくさんは売れないかもしれないけれど、定番商品の横に季節ごとのちょっとおもしろい商品を置いて目を引くことで、定番を忘れずに買ってもらうというしかけの「客寄せ商品」です。

当初ここにも、「コーヒー牛乳は甘くなければ」という業界の思い込みがありました。
業界の方たちも、「甘過ぎるのではないか」と思ってはいたのですが、「コーヒー牛乳は甘いもの」というイメージに従ってきたのです。しかし、甘いコーヒー牛乳を好んでいたのは、これまでの顧客である子供と年配の層で、アンケート結果を見ると多くの人が「甘過ぎる」と感じていることが確認できました。中には「甘すぎるから普通の白い牛乳で割って飲んでいる」という人も。そこで、「甘すぎず、香りも損なわれない、本格的な大人のコーヒー牛乳」を目指して開発することになりました。

ここでも、長年、熱処理やブレンドを手がけてきたベテラン技術者の技が活かされました。
甘いコーヒー牛乳というのは比較的作りやすいのですが、今回の微妙な甘さでおいしいコーヒー牛乳というのは、ちょっとした甘さの違いで味の印象が全然変わってしまい、ブレンドがとても困難なものでした。そんな難しい開発に、存分に腕を発揮していただいたのです。おかげで、試飲会では好評な結果を得ることができました。そして、これだけカロリーを気にする時代、甘くないコーヒー牛乳に挑戦する価値はある、ということが証明されたのです。

緑茶NEW乳も、通常は抹茶のように茶葉を粉にしたものを混ぜると考えがちですが、それだと牛乳に粉が溶けず、製造上にも問題があります。そこで、一度、液体化した緑茶を噴霧し、乾燥させてパウダー状にするスプレードライ方式の緑茶パウダーをご提案し、おいしい緑茶NEW乳の開発に成功。こうして、さまざまな意識改革や業界の常識の見直しに取り組んでいただけたことでワクワクするような製品が整い、がぜん、やる気と結束力が高まっていきました。

HIポイント
●シリーズ展開で、グループパワーを発揮させ「知ってもらう」。
●企業の財産とするためにNEW乳という商標を「記憶してもらう」。
●段階的な目標を立て、エリア細分化・商品細分化・企業内細分化でNo.1を目指す。
●アイデンティティを設定する=開発の軸(ブランディング)がぶれない。
●業界の慣習・既成概念に捉われない。
●「受皿商品」と「客寄せ商品」を設定する。


売り場は「自分たちの店だ」という意識が行動を変える

シリーズ展開には、もうひとつ理由があります。それは「NEW乳売り場」の構築です。
牛乳は通常、スーパーなどの牛乳売り場にあると思われていますが、「生乳」「加工乳」「乳飲料」と店によって好きなように並べられているため、けっこうバラバラに置かれていたりします。しかし、デザインテイストは統一してカラーを変えるといったシリーズ展開のパッケージにすることで、区分の違う商品でも自然に同じ所に並べてもらうことを目指します。つまり、売り場の一カ所を「NEW乳」で占有していくという考え方です。

また、メーカーの人は、スーパーの売り場は「自分たちの商品を置かせてもらっている場所」と思いがちで、「自分たちの店」という意識が薄い場合が多いものです。このクライアントもそうでした。しかし、大手メーカーなどは売り場を自分たちの店と捉え、POPや陳列を駆使してPRし、売り場にサービスを提供しています。そこで、「自分たちの店」という意識を持ち、シリーズ商品を置く場所を工夫することで「牛乳売り場」の中に「NEW乳売り場」を創ることが大切だということに気づいていただきました。

ダミーの商品パッケージとスウィングPOPやレールPOPを作り、実際に売り場に並べて見ていただくと…。それまで他の商品に埋もれて目立たなかった一角が、看板が付いた店のように際立ち、一転してパッと華やかに。「あの店にも、この店にも持って行きたい!」と営業スタッフの志気が上がりました。「キャラクター“ミルク王子、ニューニュウ”のキーホールダーを作ってほしい。いつも身につけて商品をアピールしたい!」と言い出すほど、愛着と誇りを感じていただけたのです。こういう工夫をすると、店舗側としても売り場が華やぐため喜んでくれますし、何よりメーカーのやる気を感じてくれます。プロジェクトメンバーは、自分たちがやろうとしていることは何か、一歩ずつ理解を深めていってくれました。

HIポイント
●売り場は、商品を並べる場ではなく「自分たちの店」という意識を持つ。
●POPや販促グッズなどを駆使して、パッケージ以外からも情報を発信する。


新しいことをしようとすると必ず否定的な意見が出る

牛乳売り場を見ると、同じようなパッケージが並んでいます。
白地に牧場、牛、緑、青といった牧歌的なものが目立ちます。こうなっているのは、どれも「牛乳」という製品の主張をメインにパッケージデザインされているからです。それに今ひとつ、新しさを感じません。つまり、思わず手にとってみたくなる、持って歩いて恥ずかしくない、リビングに置いても違和感のない、そんな現在のライフスタイルに合ったオシャレさが欠けているのです。消費者も、牛乳とはそういうものだと思っている節があります。

しかし、落ちている牛乳の人気を回復するには、牛乳離れを起こしている20〜30代の若い女性たちという新たな顧客層を取り込まなければなりません。そこで、他の牛乳と差別化を図る上で、「若い人のライフスタイルに合ったもの、買う時にこっちの方が自分のライフスタイルにフィットすると思ってもらえるもの」というコンセプトにし、シリーズ展開のパッケージとして、牛乳をイメージできる白フチの中に、おいしく、新しく、価値のあるものという意味を込めて金・銀・銅・緑というイメージのデザインを開発しました。

ところが当初、牛乳業界で生きてきた方たちにはあまりにも奇抜に見えたらしく、あれだけ意思統一を図ってきたはずなのに、皆さん違和感を持ちビックリ。特に、低脂肪×価値のあるものという意味で創った白×銀の低脂肪乳のパッケージが「えーっ!」「お葬式みたいじゃない?」と大反対に合いました。こういうことは往々にして起こります。それでもこちらをプロと認めて理解してくださる場合と、どうしても変えてほしいと言われる場合があり、後者の場合は、よくよく相手の意見を聞いて「なるほど」と思えば当然手直しします。しかし、大概はまた振り出しに戻って、このプロジェクトの意味をとくとくと説明させていただくこととなります。今回の場合は、「今までと同じじゃダメなんだ。新しくなければ意味がない!」というプロジェクトリーダーである専務の一言で、この案で行くことが決定しました。この専務は他業界から転職されてきた方で、言うなれば業界の固定概念に染まっていない方。だからこそ、客観的な判断ができたのでしょう。

プロジェクトメンバー内で意見がまとまっても、今度は取引相手であるバイヤーの反応に揺さぶられます。バイヤーの反応は大きく2種類に分かれました。「はぁ〜?これが牛乳?」「こんなの売れるの?」と疑いの眼差しを向けるバイヤーと、「すごくイイ!ぜひとも置きたい」と意欲を見せるバイヤーです。そういう時は、「どんな店にいる、どんなバイヤーですか?」と確認します。すると、前者はあまり新しいことにチャレンジしようとしない店の中年の男性であることが多く、後者は大手スーパーの若手だったりします。

大事なのは、ターゲットは誰かということです。
消費者もバイヤーも、もちろんメーカーの人たちも、人は「改革者」「先駆者」「従属者」「拒否者」に分けられます。誰も人がやっていないことにチャンレンジするのが「改革者」。その情報をいち早く入手し、自分も遅れずやってみるのが「先駆者」。世の中でブームになってから取り入れるのが「従属者」。かたくなに否定し続けるのが「拒否者」です。先ほどの前者のバイヤーは「従属者」または「拒否者」であり、後者のバイヤーは「先駆者」と言えます。感覚的なことに関しては若い方に「先駆者」が多く、「従属者」「拒否者」は保守的な年配の方に多い傾向が見られます。新商品の販路を広げるには、この「先駆者」を獲得すべきなのです。

そうは言っても実際はどうなのか確認したいと、クライアントは自分たちでいろんな人にパッケージを見てもらったそうです。すると若い人たちには「えっ、これ牛乳なの!? オシャレ!」と好評だったらしく、「若い人たちにはこういうものがオシャレに見えるんだ」と納得していただけました。自主的にこういうリサーチをしてくださることはありがたく、真剣に取り組んでいただいているという安心でもあります。ただ、気をつけなければならないのが、若い人の中にも「改革者」「先駆者」「従属者」「拒否者」がいて、リサーチの取り方が違ったり、データの解釈の仕方が違ったりすると、方向の違う答えを導き出してしまいます。たとえ半分の人が「こんなの良くない」と言ったとしても、それが「従属者」「拒否者」だったり、牛乳嫌いもしくは好きではない人なら何の問題もありません。新しいことをすると、必ず否定的な意見を言う人がいます。そちらの方が多いくらいです。でもそれが、これまでにないインパクトだったりするのです。

HIポイント
●パッケージは商品の「顔」。差別化と記号化で目を引き付けるしかけをする。
●その商品は、今のライフスタイルにフィットしているか。
●どんなに意思統一してきたつもりでも、実際に「形」にすると意見が分かれる。
●新しいことをしようとすると、必ず否定的な意見が出る。
●否定的な意見があっても、それがターゲット外の人なら問題はない。
●人は「改革者」「先駆者」「従属者」「拒否者」に分けられる。
●新商品を開拓する際は「先駆者」の意見を重視する。
●不安なことは、納得できるまでシミュレーションする。
●「気になる部分」=「インパクト」だったりする。


予算がないからPRはできない、ことはない

クライアントはこれまで、消費者に対して積極的に商品や自分たちをPRする活動を行ったことがありませんでした。新商品ができれば営業がバイヤーへ持っていき、先方任せで売り場に並べてもらうだけ。牛乳というのは利益率が低く、さらにスーパーなどで目玉商品として安く売られたりするため、広告費を捻出するのが非常に難しいのです。だからこそ、先に紹介したように「NEW乳売り場」を構築することが大事で、製品・パッケージ開発の段階から他社との差別化をしてPRの基にする必要があるのです。それには、従来とは違った形のものにしなければならず、すると最初は受け入れてくれる人が少なかったりします。そこが、新しいことに挑戦する難しさです。これまでの取り組みを通し、クライアントにはそういったことにも気づいていただきました。

売り場作り以外に、もっと幅広い人たちにも知ってもらいましょうと、メディアやイベントを使ったPRも工夫。地元の静岡新聞にニュースリリースをし、無料で新聞記事として掲載してもらいました。また『産業フェアしずおか』へブース出展し、試飲会を兼ねた発売キャンペーンを実施。アンケートに答えたらNEW乳を1本プレゼントという企画と、フェア前日に新聞記事が掲載されたこともあって会場は大盛況、ブースには長蛇の列が並びました。予算がなければないなりに、できることがきっとあるはずです。

HIポイント
●お金をかけなくてもPRする方法はある。
●広告を打つ前に、まずPR作戦を練る。
●開発段階から他社と差別化してPRの基を作っておく。
●新しいものは、最初は受け入れてくれる人が少なかったりする。


「早く次を持ってきてよ」と期待されるやりがい

実際、売り場に置いてみると、手に取り買っていくのは若い女性と若い男性で、他の牛乳の売り上げが緩やかに落ち込んでいく中、NEW乳は売り上げを伸ばしてきました。この結果を知ると、これまで懐疑的だった「従属者」的なバイヤーさんたちも取り扱ってくれるようになり、また、これから食料品にも力を入れていきたいというドラッグストアが、スーパーとの差別化を図るためにこのシリーズ全部を導入したいという発注も増えていきました。

プロジェクトリーダーである専務には、「社内競合せず新しいビジネスの種を持てたことが嬉しい。ブランドを築けていけそうな気がする」と思っていただけました。ほどよい甘さで香りも損なわない大人のコーヒー牛乳という難しいブレンドや、まったく新しい感覚の緑茶NEW乳に挑んでいただいた技術者の方は、試飲で「本当にさわやかでおいしいよね!」という感想が聞けるたびにとても嬉しそうで、これからのシリーズ展開のアイデア出しにやりがいを持っていただけました。そして営業スタッフの方からは、「いつもは商品を持って行っても“また来たの?”という対応だったバイヤーさんから、“次はどんな商品ができるの?早く持ってきてよ!”と期待してもらえるようになりました。コンセプトから自分たちで作っていって、どうしてこの商品が誕生したか全部分かっているから、“このNEWは新しい提案なんです!”と話すことがいっぱいあって嬉しいです!」と笑顔で言っていただくことができました。

ビジネスの進化は、自分たちの意識を変えながら、バイヤーや消費者の意識を変えていくところに生まれ、また、それが仕事のやりがいにつながり、企業の力となっていくのです。

HIポイント
●新しい商品は、初めは売上げが伸びないが、ブランディングによって徐々に伸びる。
●「従属者」的な人は、良い結果を知ると従う。
●ブランド力を次のビジネスの可能性につなげる。
●社員の個性と力を発揮する場を作る。
●製品の可能性を諦めない。


企業の成長は意識改革から始まる

これは牛乳メーカーさんの事例で、自分たちの業界は違うと思われる方もいるかもしれません。しかし、これまで様々な業種・業態の企業と関わってきましたが、既存事業の進化・新規事業の構築をするステップは、どこも同じです。まず「意識改革」をすることから始まります。

ブランドゴールは無限です。
どこまで行っても、これで終わりということはありません。
常に新たな課題が生まれます。それに向かって日夜がんばれることが、向上のスパイラルを築き、企業の成長につながっていきます。そこに、社員のいきがいや、やりがいも生まれるのです。それを目指す指針となるものが、HIの導入なのです。

HIポイント
●どんな業種・業態でも共通して、企業成長は意識改革から始まる。
●無限のブランドゴールに向かい、向上のスパイラルを続けることが企業を成長させる。
●意識改革をしながら、企業を進化させる指針となるのが、HIの導入。


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