ブランドとは、顧客と「安心、信頼、信用」が築けており、企業にとってビジネスを優位に進められる財産になった状態を言います。
一方、ブランディングとは、ブランドを創り上げるために行う一切の企業活動のことを言い、「ブランドがついた状態」にするためには、ブランディングを活発に行う必要があります。
ブランドデザイニングとは、ブランドを構築するためのブランディング手法で、
❶記憶化作戦
❷シズル化作戦
❸知覚化作戦の3つを組み合わせて行います。

記憶化というのはブランド構築の基本中の基本です。優れた商品を提供して顧客に感動を与えたら、「この感動を与えたのは私たちです」ということを記憶してもらうことでリピーターやスペシャルな顧客に段階的に育てていきます。
この時、顧客に記憶してもらうしくみを作るのが記憶化作戦であり、その記憶の基本となるのが、企業・事業・商品などの個性や特長をシンボライズした名前やロゴです。
人間は五感を使って情報を得ますが、その際、8割を占めるのが視覚であり、記憶化の際も、名前、ロゴ、スローガン、色、柄など視覚的な要素をいかに効果的に作成するかが重要になります。
これらのVIシステムを作り、あらゆるツールに盛り込むことで経営の5資源のバランスを取った強い戦略的ツールに仕上げます。

「VIツリー」は、企業のアイデンティティがどのようなシンボルとなりどのようなツールに反映されるかを表しています。
一番下の根にあるのがロゴなどの基本アイテムで、ここで決められたシンボルを上部の枝分かれしているさまざまなツールに入れて展開します。
このようにシンボルとなる形(ビジュアル)のアイデンティティを整えることで、ツールをバラバラに見た時でも同じファミリー(ブランド)ということが分かるようにしたシステムをVI(ビジュアルアイデンティティ)システムと言います。

自分たちのビジネスを、ネーム、フレーズ、ロゴ・マーク、エレメントなどの形に表して消費者に広く知らせ、ブランドとして記憶してもらうための「見える化」を図るのがVIシステムです。
これが一般的に言うブランド力を付けることであり、この行為を持続的に行っていくことをブランディングと言います。理想の商品作りができても、アイデンティティが設定されていなければ消費者の記憶には残りません。
記憶に残らなければ、いくら良い商品を提供してもリピートしてもらえません。それはブランド価値の大きな損失となります。アイデンティティを設定するということは、消費者に記憶してもらい、安心、信頼という財産を築くということです。
VIシステムには、企業ブランドのシンボルとなる企業VIシステム、各事業ごとのブランドとなる事業VIシステム、商品アイテムのブランドとなる商品VIシステム、専門ネームやキャラクターなどの人材VIシステムなどがあります。

❶企業のVIシステム
企業ネーム、企業ロゴ、企業スローガン、コーポレートカラー、エレメント
企業の社名やロゴなどは頻繁に作り変えるものではなく、最低でも20年は使用できるものという意識で作成します。
今、流行しているものを採用すると2~3年ですぐ古くなってしまいます。世の中の流れを想定し、10年は古く見えないような普遍的・シンプルなものにします。
また、顧客にとっても社員にとっても、そのロゴに関わることが誇りに思えるようなクオリティが求められます。

❷事業のVIシステム
事業ネーム、事業ロゴ、事業フレーズ、プロジェクトカラー、エレメント
「社会的意義のある大きな仕事」が事業であり、ひとつのビジネスとして成り立たせるのに5~10年はかかるため、10年以上使用できるものにします。
また、顧客に対しライフスタイルコンテンツ提案が明確で、見た人に「これは自分のモノだ」と思ってもらえるようなシンボルにする工夫が必要です。
事業ロゴや名前には、使命感が込められたクオリティが求められます。

❸商品のVIシステム
商品ネーム、商品ロゴ、商品キャッチ、イメージカラー、エレメント
「あ、新しい商品が出た!」というインパクトや登場感が大事なので、企業VIや事業VIに比べ、流向やイマドキの要素を効果的に取り入れる必要があります。
食品は「おいしそう」、機械系は「性能が良さそう」などという情報が伝わるシズル感を盛り込むことも求められます。
また、商品アイテムが後日シリーズ化して増える、などといった変化も想定して作成します。

❹人材のVIシステム
専門ネーム、キャラクター
これまで人材を表す肩書は課長、部長といった役職名でしたが、これからは何の専門家か、という方がお客様の安心感を得る訴求力としては大きいと言えます。
また、メディアを使って広告展開する場合はキャラクターを創り、自分たちが伝えたいことを変わりに伝えてくれる代弁者として活躍させる方法があります。
その際は、マークとしてではなく一人の人格者として創り、世界観などもきちんと設定することで説得力や存在感を高めます。

記憶化作戦を設定しても、相手の五感に訴えかけるような表現がないと効果的に伝わりません。私達は常日頃、意識しないうちに世界一流のデザインや表現に触れて生活しているため、自然と目が肥えて厳しい判断をしています。
ここを疎かにすると、必然的にダサいもの、時代遅れなものと見られがちです。とはいっても一流のハイセンスな表現をするという意味ではなく、超二流というアプローチや親しみやすさなど、それぞれのカテゴリーで伝えたい情緒がきちんと伝わるクオリティを追究することが大事です。
シズル化作戦を立てる際は、以下のディレクション~カテゴリーを整理し、まとめた上で、仕上げであるジャンルの部分を専門家に発注するという作り方をお勧めします。

❶デザイン・ディレクション
〇かわいい 〇かっこいい 〇おしゃれ 〇おいしそう(シズル感)
〇安心感 〇信頼感 〇親近感 〇先進感 〇国際感 〇期待感 〇伝統感
〇独自性 〇視認性 〇記憶性 〇展開性 〇永続性 〇伝達性 〇自我同一性
どんな印象を個性として見せたいか、表現の方向性を考える部分です。いきなりひとつに決めてしまうのではなく、いくつもイメージを挙げた後、伝えたい優先順位を決めていきます。
デザイナーに任せるのではなく、企業側が見込み客にどう見られたいかを自主的に決定することが大事です。

❷デザイン・アイテム
〇イラスト 〇カラー 〇レイアウト 〇フォトグラフ 〇フォルム 〇コピー
〇サウンド 〇ミュージック 〇タイポグラフィ 〇ピクトグラム
〇マテリアル(素材) 〇パターン 〇ライティング 〇スペース
人に印象を伝えるためのアイテムとして上記のようなものがあります。
これらの特性を知り、どれを使ってどう表現すれば効果的に伝わるかを考え、企画します。

❸デザイン・カテゴリー
〇カジュアル 〇ゴージャス 〇エレガント 〇ダンディ 〇ナチュラル 〇モダン
〇ロマンティック 〇プリティ 〇ダイナミック 〇シック 〇クラシック 〇クリア
〇シャープ 〇コケティッシュ 〇アジアン 〇ヨーロピアン 〇アメリカン
デザインには上記のような多くの人が感じるデザイン・カテゴリーがあります。
これを無視して表現すると、あまりに奇抜過ぎて一般の人には理解してもらえない、受け入れてもらいにくいということが起きてしまいます。
ここに紹介したカテゴリーをよく研究し、2つのタイプを合わせたりカスタマイズして自分たちの個性を作っていく必要があります。

❹デザイン・ジャンル
〇CG 〇グラフィック 〇パッケージ 〇POP 〇インテリア 〇ディスプレイ 〇サイン(看板) 〇ファッション 〇WEB 〇映像 〇CI 〇キャラクター 〇エディトリアル など
これらの最終表現は、ある程度経験を重ねた専門家でないと際立ったもの、社会にインパクトを与えるものはできません。ですので表現者としての良いブレーンを探すことはとても重要です。
しかし、その人は表現の部分ではプロでも、これから展開しようとするビジネスについてはシロウトです。コミュニケーションができるブレーンを見つけたら、自社のビジネスや商品を理解してもらうためのオリエンテーションを用意してから発注することが必要です。

知覚化とは「説得力・感動」などの付加価値を付けることです。
世の中の多くの人が高等教育を受けている時代、「なぜ?」と考え自分で理解し、納得したものを受け入れたいという人が増えました。モノだけでは差別化しにくい今、「私たちはこんな企業姿勢を持っています」という想いを見て判断するようになっており、それが大きな差別化になっています。

❶企業の知覚化
社会が必要とする社会貢献を見つけ社会にその内容を共感してもらう
使命感(社会貢献性、顧客への貢献)を明確にしている企業には信頼感が生まれやすいものです。感動する使命感設定により、相手に情報が入りやすくなり情報伝達性が高くなります。
・どんな社歴があり、今後どんな未来を築いていきたいか
・今後どんなイノベーションを展開していきたいか
・従業員にどんなやりがいや生きがいを提供していくか

❷事業の知覚化
社会が必要とする事業を見つけ社会にその内容を共感してもらう
B to B(産業、業界)とB to C(社会、生活)にはどのような不満や要望があるか、それをこの事業はどのように改善できる可能性があるか、などを設定して訴求します。
・今後どんなシリーズ展開を図っていくなどの期待感はあるか
・事業全体として訴えるライフスタイル提案はあるか

❸商品の知覚化
消費者が必要とする生活や業界における問題解決を見つけ内容に共感してもらう
商品のなりたち、機能性、優位性などを簡潔にまとめることが大事です。
・顧客のどんな問題解決をするものか、日常化は明確か
・パッケージやパンフレットを見た時に一瞬で良さが伝わるか
・理解しやすい、使いやすい、結果が出やすいものになっているか
・親切に説明がされているか、関連商品は充実しているか

❹製品の知覚化
製品性能の優位性や他社との差別化ポイントを見つけ内容に共感してもらう
消費者は食べずに購入するため、パッケージやサイトでどんな味わいかを伝え、食べてみたいと思ってもらう知覚化が大事です。
・この食べ物はどんな食べ物や飲み物に合うか、どんな味わいが楽しめるかが伝わるか

❺販促の知覚化
消費者が必要とする生活や業界における問題解決を見つけ内容に共感してもらう
企業、事業、商品のなりたち、機能性、優位性などを戦略的ツールに、効果的に表現、明記します。
・ターゲットは、エリアは、メディア特性は認知しているか
・情報は集約されインパクトや話題性を持ち情報伝達できるか
・製品や商品の説明は分かりやすく漏れが無く説明できているか
・問い合わせに対応する準備が充実しまたし易い仕組みはあるか

❻人材の知覚化
スキルにあった肩書、専門名において消費者に営業やスタッフの価値に共感してもらう
事業主旨にあった人材スキルの見える化、行動指針をまとます。
・愛社精神、事業や商品理解、モチベーションは持てているか
・人間的魅力、コミュニケーション力はあるか
・専門的魅力、情報収集力はあるか
・連絡、報告、相談やチェックや検証を日常行う事ができるか

 

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